酵素は生命活動に必須のものであり、生命維持にも大きく役立っています。その働きは健康維持の方面でも大きく見直され、世間では酵素ダイエットと呼ばれる酵素ドリンクを用いたダイエットも話題になっています。しかし、酵素と糖質の関係性を見誤ると、思わぬ落とし穴が待っていることもあります。今回は、酵素と糖質の関係性、酵素を用いたダイエットの問題点なども解説します。
「酵素」とは
人間の体内で行われる生命活動のためのさまざまな化学反応や作用といったものには、すべて酵素が絡んでいるといっても過言ではありません。酵素があるからこそあらゆる臓器が正常に動作していますし、循環器、消化器官といった内臓器官も正常に働いています。酵素がなければ人は生きていけません。
酵素にはさまざまな種類がありますが、主だったものには3種類があります。まず、体内で生成される体内酵素です。これには、食物の消化や栄養の吸収に作用する「消化酵素」と、それ以外の循環系の機能や運動機能、呼吸機能、免疫系などの体内のさまざまな新陳代謝に関わる「代謝酵素」があります。
そのほかに、体外から摂取できる「体外酵素」というものがあります。
「消化酵素」と糖質は大きく関係する
消化酵素の中でも、糖質と大きく関係するのは、基本的には「炭水化物分解酵素」です。名前でいえば、アミラーゼやマルターゼ、ラクターゼなどがあります。
アミラーゼは、中学理科でも習う炭水化物を分解する代表的な酵素で、主に唾液に多く含まれていることで知られています。炭水化物というのは主にデンプンであり、デンプンをブドウ糖、オリゴ糖、マルトースなどに分解し、体内に吸収できる形にまで小さくするのがアミラーゼの役割です。
アミラーゼによって分解された糖をさらに分解する酵素もいくつかあり、それがマルトースをグルコースに分解するマルターゼ、スクロースをグルコースとフルクトースに分解するスクラーゼ、ラクトースを分解するラクターゼなどです。
酵素は「酵素として吸収されない」
酵素の3種類の中で、体外酵素に関してはほぼ「消化酵素とイコール」といってよいでしょう。
なぜなら、消化酵素は体外からも摂取可能で、かつ消化酵素はそうした外部からの摂取によってある程度の効果を発揮するからです。酵素を多く含む食材を外部から摂取することで、ある程度酵素の働きに対して効果が得られるのは消化酵素のみで、代謝酵素は外部からの摂取とは一切関係しません。
しかし、よく世間でいわれているように「酵素が酵素として経口摂取でき、体内で酵素として働いてくれる」というのは正確には誤りです。
酵素はタンパク質の塊のため、まずはタンパク質として取り込まれた酵素がタンパク質として分解されます。通常の肉類などのタンパク質と同じように、ペプシンなどの働きによってアミノ酸に分解されていきます。そのため、酵素は酵素として吸収はされていないのです。
実は酵素が効果的に働いているのは「消化吸収前」です。酵素が多く入った食材を摂取した段階で、そうした物質の特性が酵素として作用するのではなく、あくまでも副次的に作用することで、「消化酵素の働きが促進される」、「結果的に消化酵素の生成量が少なく済む」といった効果を期待できるのです。
アミラーゼを多く含む食材を大量に摂取したからといって、その分だけ大量の糖が分解されるわけではないのです。
酵素ドリンクは意外と糖質が多い？
それでは、世間でよくいわれている「酵素ダイエット」について誤解されている側面を説明していきましょう。
酵素ダイエットは、酵素の力で代謝を促進し摂取カロリーを落とす狙いがあるといわれていますが、それが必ず健康につながるとは限りません。酵素ダイエットは食事のうち1回を酵素ドリンクに変えることで、健康に気をつかいながら、あまり食事量は変えずに済む画期的なダイエットであるとよくいわれますが、これは誤りです。
なぜなら酵素ドリンクは、基本野菜やキノコ類で構成される原材料に加えて、飲みやすくするために糖を多く含むフルーツを多用したり、砂糖を多く入れたりして、意外にも糖質が多くなってしまうことが知られています。食事制限をしたうえで酵素ドリンクを摂取してしまうと、酵素ドリンクによって血糖値が上がりすぎてしまい、逆に健康を損ねてしまいます。
バナナダイエットという単品ダイエットもあります。バナナには糖類を分解する酵素アミラーゼが多く含まれていますが、バナナだけ食べていると、こちらもまた血糖値の上昇が懸念されますし、栄養の偏りによって女性の場合は生理不順を起こすこともあります。
酵素と糖類の関係性をしっかり意識して食事を考えないと、健康にとって悪い作用しか残さない場合もあるので要注意です。
まとめ
以上、酵素と糖質の関係性について、一通り解説してきました。酵素は糖質を分解してくれる側面もありますが、必ずしも酵素は酵素として吸収されませんし、酵素の働きが「量に応じて増える」ことが起こるとは限りません。
酵素ドリンクにしても、「酵素以外に何を含んでいるのか」ということを強く意識しないと、健康のためには活かせません。なんでも酵素頼みだと、逆に健康を損ねる場合があるので、しっかりと調べて研究をしましょう。
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